新発見!カエル式「聖者(棲蛇)の行進」の成功法則

行進

むかしむかし、「龍を描かせたら日本一」
と言われたカエルがいた。

あまりに上手に龍を描くので
「カエリュー」と呼ばれていた。

カエリューは、自分の絵に満足できなかった。
『私の龍はまだまだ…』
『ウロコが鮮明に描けていない』
『なにに学べばよいのか…』
『龍は実在しないのだ。どうするか?』

悩みはじめて6ヶ月が過ぎた。
カエリューは自宅でニュースを見ていた。

近所のケロッピ村で殺蛙事件が起きたらしい。
ヤマカガシという種類の毒ヘビがあらわれ、
多くのカエルを襲ったのだ。

ヤマカガシ
ヤマカガシ(黄色やオレンジ色が特徴的)

そのニュースを見たカエリューは、
突然ひらめいた。

『そうか!ヘビか!』
『ヘビのウロコを身近で見ることができれば
 絵の参考になるじゃないか!』

カエリューは翌日、
1匹で『ヘビ山」を登り始めた。
100万匹のヘビが生息する、と言われる
「棲蛇(せいじゃ)の森」へ
命がけの旅である。

山に入って3時間ほど経って、
カエリューはだれかに見られている
感覚をおぼえた。

瞬間的なことだった!
草かげからヘビが一斉に現れ、
カエリューを取り囲んだ。

ヘビに襲われるカエル

その数は10匹。
一匹のカエルを捕らえるには充分な数だった。

『このままでは、間違いなく食われる!』
『まずい!どうする⁈どうする⁈』

カエリューは、急速に脳への血流が
増大するのがわかった。

ヘビたち
『うまそーな、カエルだへびぃ〜』
『バラバラに引きちぎって、分けるへびぃ〜』

まわりは、みな敵。まさに「四面楚歌」だった。
カエリューが「食われる!」
とあきらめかけた時だった。
昨日知った、ヤマカガシ殺蛙事件が頭に浮かんだ。

(いまから自分を食おうとしてる奴らは
 毒蛇、ヤマカガシではない。
 シマヘビという、毒を持たない種類だ)

(しかもまだ子ヘビじゃないか…)

(彼らの弱みはなんだ?
 ピンチこそチャンスのはずだ!)

シマヘビ
シマヘビ(毒がない)

カエリューは、一か八かの賭けに出た。

『おまえたち!毒蛇にあこがれてるんだろ?』

『シマ柄でなく、ヤマカガシのような、
 カッコいい、カラフルなウロコがほしいだろ!』

『オレは絵描きだ!おまえたちのウロコを塗装して、
 毒蛇にバカにされないようにしてやる!』

『だから、オレを食うな!』

意外なほど、子ヘビたちは
ウロコの塗装に興味を持った。
思春期のヘビは、
毒蛇のデザインにあこがれていたのである。

『じゃ、ウロコの塗装をやってくれへびぃ!』
『下手だったら、おまえを食うへびぃ』

カエリューによる、毒蛇風のウロコ塗装は
子ヘビたちの間で大評判となった。
ウロコ塗装は2ヶ月先まで
予約でいっぱいになった。
「芸は身を助く」とはよく言ったものである。

ウロコ塗装が子ヘビにウケた理由は、
毒蛇へのあこがれ以外にもあった。

まず、リピーターが出るように
水性塗料を用いたこと。
「雨のち塗装」である。

カエリューにとっては、
リピーター戦略は「生存の根拠」だった。

また、ヘビたちには手がないことも幸いした。
手がないのだから、ヘビたちの中から
絵描きが出ることがなかった。

毒蛇風のウロコ塗装がブレークして
5年が過ぎた。

カエリューは、少しずつカエル仲間に
塗装方法を伝え、ヘビによる殺蛙事件が
起きにくい社会を実現していった。

カエルと無毒ヘビの絶対的カリスマに
君臨したカエリュー。

まるで殿様のように見えたことから、
いつしか「トノサマガエル」と呼ぶ動物もいた。

「棲蛇(せいじゃ)の森」の成功者として、
地名をもじって「聖者(せいじゃ)」と
呼ぶ者もいた。

多くのヘビを従える「聖者(棲蛇)の行進」。
それは、まさに「龍のごとし」だった。

カエリューは絵以上の「龍」を実現した。

聖者(棲蛇)の行進♪(10ホールズハーモニカ)