ハーモニカの選び方/平均律と純正律
10ホールズハーモニカ(ブルースハープ)を選ぶ際、「何を買ったらよいのだろう?」とお悩みではありませんか。
デザインやメーカー、人気の機種など、ハーモニカを選ぶ基準は様々ですが、ここでは「調律」に注目してまとめます。
「平均律」と「純正律」
10ホールズハーモニカ(ブルースハープ)の調律は、「平均律」と「純正律」に大きく分けることができます。
それぞれの調律の特長と代表的な機種をご紹介します。購入の際、参考にされてください。
※「平均律」「純正律」の区分けは、各メーカーのWEBサイトを確認して行いました。
平均律
どんなポジション奏法でも使用でき、現在では一般的な調律。
ドレミファソラシドを奏でると、それぞれの音がズレない(チューナーの真ん中に針が止まる)。
メロディー演奏では違和感がないが、和音では「濁り」のあるサウンドとなって綺麗に響かない。
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純正律
濁りのない、美しい和音の響きが実現する調律。
昔の10ホールズハーモニカには純正律が用いられていた(現代でも伝統的なブルース奏者は純正律モデルを使用することが多い)。
ドレミファソラシドを奏でると、それぞれの音が微妙にズレていて、これが綺麗な和音になる仕掛け。
しかし、メロディーを奏でた時は、このズレがわずかに違和感を感じさせる。
綺麗で繊細な曲を演奏するとズレがわかりやすい。
スズキの最高級ハーモニカ、濁りの無い澄んだ和音の響き
まとめ
コンプロマイズド・チューニング(compromised tuning)という言葉をご存知でしょうか。
平均律の均等な音の間隔を保ちつつ、純正律のコードの響きもできるだけ表現できるようにするチューニングのことです。
メーカーやモデルによってその設定は様々で、例えばHOHNER(ドイツ:ホーナー社)の「Marine Band(マリンバンド)」は純正律寄り、「Crossover(クロスオーバー)」は平均律寄りのコンプロマイズド・チューニングと言われています。
そもそも昔はどうだったのか。
ハーモニカの代表機種「Marine Band」は、1980年代まで純正律チューニングでした。
つまり、戦前・戦後のブルース分野において、数々の奏法を開拓してきた奏者は、「純正律のハーモニカで和音を巧みに使いこなしてきた」と想像できるのです。
「Marine Band」の現在のチューニングは「純正律寄り」という情報から、代表機種ながらあえて紹介しませんでした。
しかし、純正律の「Marine Band」があったからこそ、ブルースハーモニカの奏法が発展してきたと想像できるので、せめて文末でも紹介したい・・・という気持ちになりました。
それにしても、ハーモニカの歴史研究もまた楽しいものです。